【最近やったゲーム】乙女と星座とQTEと百合:Virgo Versus The Zodiac

雑記
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少し前ですが、インディーゲームのRPG『Virgo Versus The Zodiac』をクリアまで遊びましたので、紹介や感想などをちょろちょろと書いてみようと思います。

どんなゲーム?

Virgo Vs The Zodiacは、『マリオ&ルイジ RPGシリーズ』と『マザーRPGシリーズ』などのJRPGに影響を受けたSF /ファンタジーJRPG。

出典:『Virgo Versus The Zodiac』ストアページ

ということで、日本…というか世界においてもかなりメジャーなRPGシリーズをインスパイアして作られたRPGです。

ストーリーはきちんと理解しようとすると難解、かつ哲学的な要素も散りばめられているのでなかなか説明し難いですが、簡潔に述べれば「ゾディアック」と呼ばれる12星座を模した神に近い存在たちが支配する世界で、ゾディアックの一人で主人公の「ヴァーゴ」がそのゾディアックたちを打ち倒し、その力の象徴である冠を捨て去ることでかつて存在した平和な時代である「黄金時代」を取り戻すために奮闘する…みたいなお話です。

指輪が12個になった『指輪物語』みたいなものです。たぶん違うけど。

バトルはいわゆるJRPGの方式であり、先に述べた『マリオ&ルイージRPGシリーズ』の戦闘のように(と言っても、私はこのシリーズの初代と言える『スーパーマリオRPG』しか遊んだことはないのですが)攻撃や防御などのアクションごとにボタン入力やボタン連打を要求されるQTE方式の戦闘となっています。

雰囲気はストアページの紹介やPVなどを見ていただければだいたいわかるのではないかと。

感想など

それぞれ詳しく書いていきます。

星座を擬人化したキャラクターたち

タイトルや紹介文にもあるように、このゲームの主要な登場人物は星座を模して設定されています。主人公のヴァーゴは乙女座、最初に対峙するゾディアックのカプリコーンは山羊座などなど。

そのキャラクターデザインも、星座を擬人化した姿として形作られています。ちょっとバタ臭い…と言ってはアレな部分もありますが、とてもよくできているなと思いました。可愛らしいキャラから凛々しいキャラ、荒々しいキャラや不思議ちゃんなど、なんとも愛着が湧くようなキャラばかりです。正直好き。

日本で星座をモチーフにした作品といえばまず浮かぶのが『聖闘士星矢』かと個人的には思いますが、あちらが少年漫画的なデザインだとすれば、こちらはどこか儚い香りを醸し出す少女漫画的なデザインと言えるでしょう。

ドット絵もフィールドパートと戦闘パートでそれぞれ頭身が異なるグラフィックが用意されており、よく動いてかわいいです。装備しているアイテムによってもグラフィックが変わるので、この点も相当作り込まれているように感じました。

ちなみに、このゲームのデベロッパーのMoonanaはブラジルに拠点を置くチームですが、どうもブラジルでも日本のサブカル文化が流行しているようです。このゲームもそういったサブカル文化に影響を受けているのかもしれません。あと、ブラジルでは聖闘士星矢が流行っているらしいですよ?

なお、ゾディアックたちはすべて女性として描かれています。これ重要(後述)。

勧善懲悪ではないストーリー

いわゆる絶対悪が存在するストーリーではなく、それぞれのキャラクターが自身の正義や信念に基づいて行動をしています。存在する世界も支配するゾディアックによって特色付けられており、労働こそが正義のブラック企業みたいな世界、定期的に生贄を捧げる必要があるがそれ以外は穏やかな世界、一見平和そうに見えますが世界の底の方ではウイルスが蔓延しており、犠牲者が出ているものの支配者がそれに気付いていない世界など、どこも歪みを抱えています。

そんな世界を正すために立ち上がった主人公のヴァーゴですが、割と独りよがりな性格であり、自身の正義を信じて疑いません。また、他の大半のゾディアックは現状に満足しており、世界が変わることを望んではいません。そのゾディアックを打ち倒すということは彼女らが支配する世界を侵略するということと同義であり、まあそこまで深刻に描写されているわけではないですがやってることは結構暴力的な行為なわけですね。

パーティーメンバーも一癖あり、仮面の少女アルゴルは一見飄々とした性格ながら自身の目的のためには人殺しすら厭わない残忍な一面を持っていたり、ヴァーゴ様ファンボーイのスピカはヴァーゴのためなら何でもやる、ある種行き過ぎた崇拝に近いような態度であったり。

このキラキラした一面だけではないキャラクター描写・ストーリー描写が何とも人間臭く感じてしまい、ゲームに引き込まれてしまう部分でもありました。

ちなみにストーリー中の行動によってエンディングが分岐するマルチエンディングです。

世界観の表現やフレーバーテキストの量、そして翻訳が秀逸

世界観は他になかなか例を見ない独特なものであり、いわゆる「地球のような惑星」を舞台にしている作品とは一線を画しています。

正直私自身も理解はしきれていないのですが、宇宙のような空間において、それぞれのゾディアックが支配する星、ないしは次元のようなものが存在し、それぞれが戦争を行ったり、貿易を行ったりと相互に影響を与えあっているようなイメージです。『マジック:ザ・ギャザリング』のプレインズウォーカーとそれが支配する次元のようなものをイメージすると近いかも。

そしてその世界観を補完するのが散りばめられた膨大なフレーバーテキスト。アイテム一つ一つはもちろん、フィールドに点在するオブジェクトを調べた際のメッセージも、ある意味執念を感じるレベルで作り込まれています。同じマップ上にある同じグラフィックのオブジェクトでも、調べた際に表示されるメッセージが一つ一つ異なると言えば伝わるでしょうか。このあたりは、公式の紹介にある『MOTHERシリーズ』や、紹介にはないですが同じインディーRPGの大作『Undertale』に近いものがあります。

日本語訳も秀逸であり、一部直訳したような意味が通りづらい箇所があるものの、その膨大なテキスト量がきちんとわかりやすい形で翻訳されています。

一例を挙げると、序盤に出てくるザコ敵のヤギのサラリーマンの名前が「ヤギリーマン(原語:Salarygoats)」。そのヤギリーマンの一部が、労働条件の改善を求めて労働革メェ〜を掲げて活動しているのです。もうこの時点で素晴らしい翻訳センスであるという疑いの余地はありませんね?

個人的にいいなあと感じた箇所は、翻訳によって日本の漫画・アニメ作品のように登場人物が個性付けされている点です。主人公のヴァーゴはてよだわ言葉を使う活発なお嬢様風キャラ、パーティーメンバーのアルゴルは関西弁の飄々としたキャラ、ゾディアックの一人でヴァーゴと親しい関係にあるパイシーズは儚げな深窓の令嬢キャラ…など。

このあたり、原文ではどう表現してるのかちょっと気になります。まあ、原文を見ても英語が読めないので理解はできないのだけれども。

音楽もいいよ

どこかレトロで懐かしい雰囲気を覚えるBGMも秀逸です。YouTubeに作者の方がサウンドトラック一式をアップしているので、興味がありましたらぜひ。

個人的に好きなBGMは『Cubicle』です。

戦闘は難易度高め

目玉である戦闘パートですが、正直難易度はかなり高いです。Steamの実績取得率を見ればわかりますが、この記事を書いている現在、ゲームを始めた際に取得できる実績の取得率が85%程度なのに対し、最初のステージのボスを倒した際に取得できる実績の取得率が50%を切っています。ガスコイン神父かよ。

難易度が高い理由として、戦闘に関わるシステムがかなり難解である点が挙げられるかと思います。理解してしまえば直感的に遊べる部分ではあると思うのですが…。

簡単に説明していきます。
まずキャラクターには体力、いわゆるHPに相当するパラメータと、それとは別に「純潔」と呼ばれる、言ってしまえばバリアのようなパラメータが存在します。純潔は戦闘開始時には0ですが、防御に相当するコマンドを選択すると一定量チャージされます。この純潔が存在する場合、まずこの純潔から敵のダメージを差し引き、その後溢れたダメージは体力から差し引いていく、という処理になります。
また、純潔が存在する状態で攻撃を受けた場合、その対象となったキャラクターはカウンターターンを得てカウンター技を使うことができます(このシステムは敵味方共通)。このカウンターターンで減った分の純潔を再度チャージしたり、あるいは敵に攻撃を加えて行動妨害を行う、ということも可能です。

要するに、戦闘の流れとしてはまず純潔をチャージして敵の攻撃に備え、純潔を維持しながら敵の体力を減らしていくというのが基本になってきます。特に、このゲームでは体力の回復手段が限られているので、いかに体力を減らさずに戦闘を進めるかというのは重要です。

一般的な用語に置き換えれば比較的スッと頭に入ってきやすいかと思うのですが、いかんせんゲーム内では独自用語で説明されるので、理解できずに進めてしまうパターンが多いのかなと思います。まあそのへんの雑魚は適当に行動してもどうにかなりますが、それでどうにもならなくなってしまうのが最初のボスであり、そこが最大の壁になっているように思えます。実際私も5〜6回ぐらいは勝てずに再戦を続けて、そのときはどうすりゃいいんだこれと割と投げ出しそうになりました。

また、戦闘にまつわる要素として大きいのが「属性の三すくみ」です。これがまたわかりづらい。

キャラクターはそれぞれ「柔軟(緑)」「不動(赤)」「野心(青)」のパラメータを持ち、かついずれかの属性に属しています。また、装備する武器によってもその攻撃の属性も変わります。柔軟属性のキャラが不動属性の装備で攻撃することも可能というわけです。

この三すくみを突くのが攻略のキモではあるのですが、やっぱりここも一般的な「ほのおはみずに弱く、みずはくさに弱く…」みたいな馴染みのある、もしくはイメージしやすい用語が使われているわけではないので、なかなか頭に入ってこない。世界観の表現とも繋がってくる部分なので何とも言えませんが、ちょっともったいない部分ではあったかなと思います。

それと、QTE部分はタイミングがシビアであったり、入力時間が短かったりとこれまた難しめの調整となっています。ゲーム自体の難易度とは別に、QTEのスピードもオプションから変更できるので、とりあえず遊んで難しいと感じたらまずはQTEのスピードを下げてみるといいでしょう。

他にも属性以外のパラメータであったり、バフ・デバフやステータス異常の概念であったり、近接・遠隔・範囲・防御のコマンドだったりと戦闘にまつわる要素はまだまだあるのですが、長くなりすぎてしまうのでこれ以上は書きません。

このゲームは百合ゲーである

先に述べたように、ゾディアックはすべて女性として描かれています。そして、一部のゾディアックは親密な関係であったり、モロに恋人関係と描写されているのです。つまり百合ゲーなわけです。

主人公のヴァーゴも、自身のパートナーである魚座のパイシーズと自身の使命とを天秤にかけて苦悩するシーンがあります。つまり濃厚な百合ゲーなわけです。

星座を擬人化したアニメ調のキャラクターたちが、儚い世界で百合百合する…。それだけで、このゲームをやらない理由があるでしょうか?

おわりに

一見ポップな見た目で、戦闘にアクション要素もあり大衆受けしそうな見た目でありながら、その実ゴリゴリの骨太な高難度RPGです。とはいえ、難易度調整も可能ですし、最終的にはレベルを上げて物理で殴るということも可能ではありますので、ビジュアルや音楽に惹かれた方にはぜひおすすめです。

価格は¥2,000とインディーゲーとしてはややお高めですが、セールや外部ストアでかなり安くなるタイミングもありますので、気になる方は狙ってみるといいでしょう。

おまけ:詰まった方向けの情報

  • 最初のステージが一番難しいです。とにかく戦えるザコ敵とは戦ってレベルを上げ、戦闘の感覚を掴みましょう。
  • 戦闘は初手で純潔をチャージし、カウンターでダメージを与えていくスタイルがおすすめです。カウンターの際に純潔が減っていればガードして純潔を維持しましょう。
  • 最初のボスは時間制限があります。そもそも純潔を削りきれないとお話にならないので、ダメージが足りていないようならレベル上げ。
  • 回復アイテムは惜しまずに使いましょう。買わなくても拾えます。
  • 拠点に行けるようになったら雪だるまに話しかけるとレベル上げ用のステージにワープできます。一度拠点を離れるとそのチャプターは戻れないので、装備強化は一通りしておくと吉。
  • 基本的に後戻りできないゲームです。特にサブクエストの消化は入念に行ったほうがいいでしょう。

画像引用元:『Virgo Versus The Zodiac』ストアページ

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